『「相続させる」旨の遺言』公証人実務をなぜに裁判所は追認したのか

1.「相続させる」旨の公正証書遺言実務を追認した最高裁判所

特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言により、その者が被相続人の死亡とともに当該不動産の所有権を取得した場合には、その者が単独でその旨の所有権移転登記手続をすることができ、遺言執行者は、遺言の執行として右の登記手続をする義務を負うものでない。(最判平7・1・24)

この判例により、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は、遺贈ではなくて、遺産分割方法の指定と解され、

当該遺産が不動産である場合、当該相続人が単独で登記手続をすることができるとされていることから、利用価値が高い。

(なお、2003年度(平成15年度)税制改正以前は登記に関して必要となる登録免許税が遺贈の場合に比べて低額であるというメリットもあった)。

2.「相続させる」遺言についてのさらなる実務展開

さらに、「相続させる」遺言によって不動産を取得した相続人は、登記なくしてその権利を第三者に対抗することができるとの判例(最二小判平成14年6月10日)が出た。

これにより、他の相続人の債権者による相続財産の差押えを未然に防ぐことができるというメリットも生まれた。

他に、「遺産が農地の場合、「遺贈」と異なり知事の許可がいらない。」

「賃借権を相続する場合、賃貸人(所有者)の承諾がいらない。」

「遺産が債権の場合、対抗要件を備えることを要しない。」というメリットもある。

3.最高裁判所  平成3年04月19日 第二小法廷 判決

(1)判示事項

一 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言の解釈
二 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合における当該遺産の承継

(2)裁判要旨

一 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきである。

二 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される。

4.最高裁判所  平成7年01月24日 第三小法廷 判決

(1)判示事項

特定の不動産を相続させる旨の遺言と遺言執行者の登記手続義務

(2)裁判要旨

特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる旨の遺言により、甲が被相続人の死亡とともに当該不動産の所有権を取得した場合には、甲が単独でその旨の所有権移転登記手続をすることができ、遺言執行者は、遺言の執行として右の登記手続をする義務を負わない。
(参照法条 民法908条,民法1012条1項,民法1013条)

5.最高裁判所  平成14年06月10日 第二小法廷  判決

(1)判示事項

「相続させる」趣旨の遺言による不動産の取得と登記

(2)裁判要旨

「相続させる」趣旨の遺言による不動産の権利の取得については,登記なくして第三者に対抗することができる。(参照法条 民法177条,民法908条,民法985条)

(3)判決文引用

被上告人は,夫である被相続人Dがした,原判決添付物件目録記載の不動産の権利一切を被上告人に相続させる旨の遺言によって,上記不動産ないしその共有持分権を取得した。法定相続人の1人であるEの債権者である上告人らは,Eに代位してEが法定相続分により上記不動産及び共有持分権を相続した旨の登記を経由した上,Eの持分に対する仮差押え及び強制競売を申し立て,これに対する仮差押え及び差押えがされたところ,被上告人は,この仮差押えの執行及び強制執行の排除を求めて第三者異議訴訟を提起した。

特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は,特段の事情のない限り,何らの行為を要せずに,被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される(最高裁平成元年(オ)第174号同3年4月19日第二小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)。このように,「相続させる」趣旨の遺言による権利の移転は,法定相続分又は指定相続分の相続の場合と本質において異なるところはない。そして,法定相続分又は指定相続分の相続による不動産の権利の取得については,登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる(最高裁昭和35年(オ)第1197号同38年2月22日第二小法廷判決・民集17巻1号235頁,最高裁平成元年(オ)第714号同5年7月19日第二小法廷判決・裁判集民事169号243頁参照)。したがって,本件において,被上告人は,本件遺言によって取得した不動産又は共有持分権を,登記なくして上告人らに対抗することができる。

 

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