遺贈は遺言でなされる無償譲渡だがタダでもらえるのにイヤがることもあるのはなぜか

遺贈の承認と放棄は自由であるが、欲しくない財産や負担付遺贈では、需要を拒絶されることもあるし、外車のように維持費が大変な場合もあろう。

なお、死因贈与は単独行為でなくて契約である。

遺言による信託の制度が信託法で設けられている。

(1)遺贈

①遺贈とは

遺贈は、遺言によって無償で財産的利益を他人に与えることである。

遺贈により利益を得るものが受遺者で、相続人はもちろん、法人でも可能である。

胎児も受遺者になれるが、欠格者はなれない(965条)。

なお、相続債務が多い時に、相続放棄をしても、受遺者になることは可能である。

包括遺贈及び特定遺贈
第九百六十四条  遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。

包括受遺者の権利義務
第九百九十条  包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

包括遺贈は、遺産の全部または一定の割合で示された部分を与え、債務も承継するが、特定遺贈は遺産中の特定の財産を与えるもので特定物の場合も不特定物の場合もある。

遺贈は、法律行為なので負担、条件、期限などをつけることができ、補充遺贈とは、受遺者と定められた者が放棄した時に他の者に遺贈する形で、裾分け遺贈とは、受遺者が受ける利益の一定割合を他の者に与えるものであり、後継ぎ遺贈とは、受ける利益をある条件の成就、ある期限の到来によって他の者に移転することである。

遺言による相続分の指定
第九百二条  被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
2  被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

この場合に、相続人の一部の者にだけ割合的指定をした場合は、包括遺贈とすべきとするのが通説であろう。

②遺贈の承認と放棄

遺贈の放棄
第九百八十六条  受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。(特定遺贈の場合で、包括遺贈は相続の承認放棄の規定が適用される)
2  遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

受遺者に対する遺贈の承認又は放棄の催告
第九百八十七条  遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負う者をいう。以下この節において同じ。)その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる。この場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす。

受遺者の相続人による遺贈の承認又は放棄
第九百八十八条  受遺者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続人は、自己の相続権の範囲内で、遺贈の承認又は放棄をすることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

遺贈の承認及び放棄の撤回及び取消し
第九百八十九条  遺贈の承認及び放棄は、撤回することができない。
2  第九百十九条第二項及び第三項の規定は、遺贈の承認及び放棄について準用する。(錯誤等の適用あり)

※遺贈が受遺者の遺言者以前の死亡によって無効になるときは、代襲相続もない。

受遺者の死亡による遺贈の失効
第九百九十四条  遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2  停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属
第九百九十五条  遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

相続財産に属しない権利の遺贈
第九百九十六条  遺贈は、その目的である権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかったときは、その効力を生じない。ただし、その権利が相続財産に属するかどうかにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認められるときは、この限りでない。

※婚外女性への遺贈が公序良俗に反するときは無効になるとした判例がある。

遺贈の効力
特定遺贈の目的物は、遺言者の死亡と同時に、直接受遺者に移転する(大判大5・11・8民録22-2078)。

受遺者は遺贈義務者に遺贈の履行を請求する権利を有する。

包括遺贈の場合は遺産分割にも参加できる。

なお、不動産は登記しなければ第三者に対抗できないし、指名債権譲渡の場合は通知承諾で対抗要件を備える。。

受遺者による担保の請求
第九百九十一条  受遺者は、遺贈が弁済期に至らない間は、遺贈義務者に対して相当の担保を請求することができる。停止条件付きの遺贈についてその条件の成否が未定である間も、同様とする。

受遺者による果実の取得
第九百九十二条  受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を取得する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

遺贈義務者による費用の償還請求
第九百九十三条  第二百九十九条の規定は、遺贈義務者が遺言者の死亡後に遺贈の目的物について費用を支出した場合について準用する。
2  果実を収取するために支出した通常の必要費は、果実の価格を超えない限度で、その償還を請求することができる。

第九百九十七条  相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が前条ただし書の規定により有効であるときは、遺贈義務者は、その権利を取得して受遺者に移転する義務を負う。
2  前項の場合において、同項に規定する権利を取得することができないとき、又はこれを取得するについて過分の費用を要するときは、遺贈義務者は、その価額を弁償しなければならない。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

不特定物の遺贈義務者の担保責任
第九百九十八条  不特定物を遺贈の目的とした場合において、受遺者がこれにつき第三者から追奪を受けたときは、遺贈義務者は、これに対して、売主と同じく、担保の責任を負う。
2  不特定物を遺贈の目的とした場合において、物に瑕疵があったときは、遺贈義務者は、瑕疵のない物をもってこれに代えなければならない。

遺贈の物上代位
第九百九十九条  遺言者が、遺贈の目的物の滅失若しくは変造又はその占有の喪失によって第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものと推定する。
2  遺贈の目的物が、他の物と付合し、又は混和した場合において、遺言者が第二百四十三条から第二百四十五条までの規定により合成物又は混和物の単独所有者又は共有者となったときは、その全部の所有権又は持分を遺贈の目的としたものと推定する。

第三者の権利の目的である財産の遺贈
第千条  遺贈の目的である物又は権利が遺言者の死亡の時において第三者の権利の目的であるときは、受遺者は、遺贈義務者に対しその権利を消滅させるべき旨を請求することができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。

(債権の遺贈の物上代位)第千一条  債権を遺贈の目的とした場合において、遺言者が弁済を受け、かつ、その受け取った物がなお相続財産中に在るときは、その物を遺贈の目的としたものと推定する。
2  金銭を目的とする債権を遺贈の目的とした場合においては、相続財産中にその債権額に相当する金銭がないときであっても、その金額を遺贈の目的としたものと推定する。

③負担付遺贈

負担付遺贈
第千二条  負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
2  受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(負担付遺贈の受遺者の免責)
第千三条  負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴えによって減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じて、その負担した義務を免れる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(負担付遺贈に係る遺言の取消し)
第千二十七条  負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
※この場合は、その財産は相続人に帰属する(995条)。

④死因贈与

契約なので単独行為である遺贈と異なるが、効力発生事由が同じなので遺贈に関する規定に従う(554条)。

このうち、方式・遺贈の承認放棄・遺言書の検認等の規定は性質上適用されない。

撤回の自由については、「負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が負担の全部またはこれに類する程度の履行をした場合には、右契約締結の動機、負担の価値と贈与財産の価値との相関関係、契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らし右契約の全部または一部を取り消すことがやむをえないと認められる特段の事情がない限り、一〇二二条、一〇二三条の各規定は準用されない。(最判昭57・4・30)」とする判例がある。

贈与者よりも受贈者が先に死亡した時に失効するかについてはの判例は分かれている。遺言執行者の準用は認めた判例がある。遺留分減殺順序については、遺贈の後で生前贈与の前とした判例がある。

⑤遺言による信託

・遺言信託(信託法3条等)

信託の方法
第三条  信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
一  特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法
二  特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法

・遺言代用信託(信託法90条等)

(委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例)
第九十条  次の各号に掲げる信託においては、当該各号の委託者は、受益者を変更する権利を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
一  委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託
二  委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託
2  前項第二号の受益者は、同号の委託者が死亡するまでは、受益者としての権利を有しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

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