民法(相続関係)改正要綱案201801のポイント
【民法改正(相続分野)の要綱案の主なポイント】は以下の通りである。
なお、平成30年6月に196回国会で審議され、成立する見込みである。
※民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案、法務局における遺言書の保管等に関する法律案
Contents
1.配偶者の居住権を保護するため方策
配偶者が相続開始時に居住している被相続人所有の建物に住み続けることができる権利を創設し、遺産相続の選択肢の一つとして取得できる
(1)配偶者の居住権を短期的に保護するための方策
(2)配偶者の居住権を長期的に保護するための方策
2.遺産分割に関する見直し等
婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、配偶者が居住用の不動産(土地・建物)を生前贈与したときは、その不動産を原則として遺産分割の計算対象としてみなさない。
配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定) 、
仮払い制度等の創設・要件明確化、
一部分割 、
遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲
3.遺言制度に関する見直し
自筆ではなくパソコンなどでも自筆証書遺言の財産目録を作成できる。
法務局が自筆証書遺言を保管する制度を創設する。
自筆証書遺言の方式緩和 、
自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の創設
4.相続の効力
遺言などで法定相続分を超えて相続した不動産は、登記をしなければ第三者に権利を主張できない
5.相続人以外の貢献の考慮
相続人以外の被相続人の親族(相続人の妻など)が被相続人の介護をしていた場合、一定の要件を満たせば相続人に金銭請求できる
6.遺言執行人の権限強化、遺留分制度の見直し等
※196回国会での議案要旨
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案(閣法第五八号)
本法律案は、高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑み、相続が開始した場合における配偶者の居住の権利及び遺産分割前における預貯金債権の行使に関する規定の新設、自筆証書遺言の方式の緩和、遺留分の減殺請求権の金銭債権化等を行おうとするものであり、その主な内容は次のとおりである。
一民法の一部改正
1 配偶者が、終身又は一定期間、無償で被相続人の財産に属した建物の使用及び収益をすることができる権利( 配偶者居住権) を創設し、遺産分割又は遺贈により、これを取得することができることとする。
2 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち、一定額については、他の共同相続人の同意を得ることなく、単独で払戻しをすることができる。
3 自筆証書遺言の要件を緩和し、自筆証書に相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については自書することを要しないこととする。
4 遺留分を侵害された者の権利の行使によって遺贈又は贈与の全部又は一部が当然に失効するとされている現行法の規律を見直し、遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることとする。
5 被相続人の親族で相続人以外の者が、被相続人の療養看護等を無償でしたことにより被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした場合には、相続の開始後、相続人に対して金銭の支払を請求することができる。
二家事事件手続法の一部改正
預貯金債権の仮分割の仮処分について遺産分割前の保全処分の要件を緩和するとともに、民法において新設する特別の寄与の制度に関する手続規定を設ける。
三施行期日
この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、一の3 については公布の日から起算して六月を経過した日、一の1 については公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。