相続実務の悪弊である相続分の譲渡と抽象的すぎる相続回復請求権とは何か

1.相続分の譲渡と取戻し

現行法は、遺産分割前に相続分の譲渡を認めているが、立法論として疑問が大きい。

相続分の取戻権
第九百五条  共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2  前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。

⇒共同相続人の一人であれば紛争が新たに生じる恐れないから取戻権の適用はない。

◆共同相続人の共有の相続登記がされている農地につき、「相続分の贈与」を原因として共同相続人の一人に対する他の共同相続人の持分の移転登記が申請された場合には、登記官は、農地法三条一項の許可を証する書面の添付がないことを理由に申請を却下することはできない。〔旧法関係〕(最判平13・7・10民集55-5-955)

ただし、債務については債権者保護の立場から併存的債務引受になろう。

また、個々の相続財産上の持分の第三者への譲渡は可能である。共有関係になろう。

2.相続権の侵害と相続回復請求権

先順位相続人の行った相続放棄の意思表示が無効なのに次順位の相続人(表見相続人)が相続したものとして遺産を占有している場合、

先順位相続人に相続欠格事由が存在する場合

などが典型例であろう。

請求権者は、真正相続人・包括受遺者・相続分の譲受人・遺言執行者である。

相手方となる者は、表見相続人およびその相続人、善意・無過失で相続権を侵害している共同相続人(悪意または有過失は物権的請求権の対象)。

相続回復請求権
第八百八十四条  相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする。

◆共同相続人のうちの一人または数人が、相続財産のうち自己の本来の相続持分を超える部分についても自己の相続持分であると主張してこれを占有管理し、真正共同相続人の相続権を侵害している場合について、本条の適用を否定すべき理由はないが、その者が悪意であり、またはそう信ずることに合理的理由がない場合には、侵害されている他の共同相続人からの侵害の排除の請求に対し相続回復請求権の時効を援用しえない。(最大判昭53・12・20民集32-9-1674)

◆相続回復請求権の消滅時効を援用しようとする者は、真正共同相続人の相続権を侵害している共同相続人が、右の相続権侵害の開始時点において、他に共同相続人がいることを知らず、かつこれを知らなかったことに合理的事由があったことを主張立証しなければならない。(最判平11・7・19民集53-6-1138)

◆単独相続の登記をした共同相続人の一人が、本来の持分を超える部分が他の共同相続人に属することを知っていたか、または単独相続したと信ずるにつき合理的事由がないために、他の共同相続人に対して相続回復請求権の消滅時効を援用できない場合には、その者から不動産を讓り受けた第三者も消滅時効を援用できない。(最判平7・12・5判時1562-54)

◆相続回復しうる間は、僣称相続人は相続財産たる不動産を占有しても、時効取得することはできない。(大判昭7・2・9民集11-192)

 

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