遺言書があっても銀行等はこんな時には払戻を相続人等にしない その3(公正証書遺言等の場合)

1.公正証書遺言があるときの銀行への払出請求の仕方

(1)公正証書遺言の例

(法務省改正審議会資料:民法(相続関係)部会 参考資料4より一部引用)

(2)公正証書遺言の信頼の高さ

公正証書遺言は、元裁判官などの法律専門家である公証人の関与のもとで作成するので、方式違背を理由に無効とされるおそれや、遺言の解釈や有効性に疑義が生じるおそれが小さく、しかも原本が公証役場で原則20年間保管されるため、自筆証書遺言等に比べて遺言書の滅失や偽造・変造のおそれも小さいことなどから、当職のこれまでの経験では、銀行等は比較的スムーズに支払いに応じてくれることが多い。

もっとも、実務ではいよいよ公証人の席に行って、遺言書を作成しようとするその間際になって、あれこれと遺言者である依頼者が一分変更したいといい始めることもないわけではないし、当職もこれまでの経験で、公証人がここははやりこういう風にした方がいいのでないかと言い始めて一部変更することもあるのだ。

その時は上記の実物のように、訂正の部分を指摘して法に基づいて削除加入をする。公証人、遺言者及び証人2人の押印もする。

なお、正本が実務では用いることが通常であることには留意が必要である。当職も、一つの遺言執行業務が終わると謄本はきれいだが、正本はかなり傷んでしまうのはやむを得ないか。

2.秘密証書遺言

実務では、非常に少ないがこの秘密証書遺言も偶にある。関東の実務家が最近作成したと聞いた。公正証書遺言にして公証人に払う費用が難しいが、11,000円で済むとのことで依頼者がこれを選択したとのことであった。

公証人がかかわってくるが内容ではなくて存在であるから、紛争などを恐れる銀行等がそのまま支払うとは限らない。また、慣れた相続の責任者でないと実物を見たこともないであろう。

また、裁判所の検認を経ていないと事実上は支払をしてくれることが困難である。

パソコンで本文を作って自署押印するのが多いパターンであろう。それを封筒にしまって、まさに誰にも中身がわからないように秘密にして封して、公証人役場で公証人と証人2人が署名押印したものを封書に張り付けておくのが多いであろう。もっとも、大きな封筒であれば、空白部分に直接署名などをする場合もあろう。

このときに、遺言者や証人が、実印で押印している場合には印鑑証明書が必要になる。実印以外の印鑑による押印である場合でも、当該印鑑が、遺言者や証人が金融機関に届け出ている印鑑である場合は、印鑑票との照合によって、確認してくる。

なお、秘密証書遺言の加除訂正は、この相続おもいやり相談室のサイトの自筆証書遺言の加除訂正と同じなので参考にされたい。

3.特別方式の遺言(死亡危急者遺言など)

(1)死亡危急者遺言

当職はまだ、この方式の遺言を作成したことはないが、恐らく今後は十分にあり得ると思う。というのは、すでに京都の弁護士の作成した実物が持ち込まれたことがあるからである。

976条によって作成したものであったが、残りが短期間の余命宣言を受けた高齢の方が兄弟のうちでもっとも世話になった一人に自分の子供がいながらも全財産を相続させるというものであった。ざっくり見ても高額であった。

特別受益があるのか、遺留分があるのか等の紛議が発生しそうであるが、計算してほしいとのことで包括受遺者が相談に来られたのだ。

弁護士が証人として三人立会い、その一人に遺言の趣旨を口授して筆記されて作成した。全員の署名捺印があった。弁護士の字はうまくなかったのはもともとそうなのか緊急だからか不明であった。

もちろん、裁判所の確認の審判があった。家庭裁判所は、死亡危急者遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得た場合に確認の審判を行うが、家庭裁判所の確認の審判は、死亡危急者遺言の有効性自体を確定させるものではなく、銀行等がそのまま支払うとは限らない。

先ほど、秘密証書遺言で述べたように、不慣れな銀行等では時間がかかる。

また、もしも普通方式による遺言ができるようになってから6ヵ月間生存していれば、無効になるから、除籍謄本を再確認してくるであろう。

(2)伝染病隔離者遺言

誠に残念であるが、新型コロナウイルスの蔓延する時代になってしまい、この方式もあり得るであろう。

遺言者が交通を絶たれた場所にいて、遺言者、筆者、警察官および証人の署名・押印があって、普通方式による遺言ができるようになってから6ヵ月間生存していないことなどの要件に当てはまる場合が出てきそうだからである。

しかし、警察官1人および証人1人以上を確保することは難しいことも多いであろう。

(3)在船者遺言

これも、誠に残念であるが、新型コロナウイルスの蔓延する時代になってしまい、それとの関係でもあり得るかもしれない。クルーズ船での伝染病の蔓延に固唾をのんでみた記憶も生々しい。

船舶の中で、遺言者、筆者、船長または事務員1人および証人2人以上の署名・押印が必要である。

(4)船舶遭難者遺言

これも稀であるが、やはりあり得るものであろう。遺言者が遭難した船舶の中で死亡の危急が迫っていることもある得るからである。

2人以上の証人の署名・押印が必要である。

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