改正相続法ではどの遺言書を選択して、実際どう書けばいいか。その3

1.改正相続法で変更になった「遺留分」制度に関した遺言書の例

(1)遺留分減殺請求から侵害額請求への法改正

従来は、遺言者の意思を法が蔑ろにすることが可能であった。これまでは遺留分減殺請求がなされると、遺産である不動産は共有状態となり、また株式は準共有状態になって株主名簿に登録されるという、強力な効力を持ち法が遺産紛争をより鮮明にするという法そのものの存在理由を疑うようなことになっていた。これに便乗してすぐに訴訟にしたがる法匪的な法律家もいたわけだ。

そこで、今回の法改正があって物権的な効果はなくて債権的効果のみになった。また、受遺相続人が遺留分侵害額を直ちに支払うことができない場合に備えて、支払い猶予、期限や分割払い可能なものに変わってより遺言者の最終意思を尊重する制度に変わったのだ。

(2)従来の減殺請求の内容証明例

遺留分減殺請求書

当職は、山田次郎(生年月日〇〇年○○月○○日)より、被相続人○○の遺言書による相続に関する相談を受けたところ、後記記載の不動産及び金融資産が長男である山田一郎(生年月日〇〇年○○月○○日)に全部相続させるとの内容であるが、民法上はもう一人の法定相続人である山田次郎氏にも4分の1の遺留分があるのでその旨伝えたところ、代理人として請求してほしいとの委任を受けたのでまずはこの内容証明を差し上げる次第である。

具体的には、不動産についての4分の1の持ち分による共有関係の承認と金融資産の4分の1を返還請求する次第である。

(以下省略)

(3)相続法改正による遺留分侵害を予想した遺言書の例

第1条 遺言者は、遺言者の所有する下記不動産、現金及びすべての金融機閏の預貯全債権等金融資産を含むー切の財産を、遺言者の妻○○○○(昭和○○年○月○○日生)に相続させる。

(中略)

第5条 本遺言に関し、受遺相続人に対し遺言者の他の相続人から遺留分侵害額請求がなされた場合は、遺産である金融資産から支払うものとし、それが不足するときは、受遺相続人において代償金をもって上記遺留全侵害額の支払いを負担するものとする。この場合、受遺相続人は、当該負担額をー括で支払えない場合は、民法第1047条第5項に基づき、裁判所に対して負担する債務の全部またはー部の支払いにつき相当の期限の許可を受けるものとする。

(以下略)

2.全財産を換価処分して相続等させる「清算型遺言書」の例

(1)清算型遺言書の必要性と煩雑さ

この清算型の遺言書は、相続おもいやり相談室の当職に最も多く持ち込まれる内容のものである。ファイナンシャルプランナーの資格も当職は持つので、他で相談に行ったが税金面も含めたことがうまく答えられないことが多いようである。また、遺言執行に業務が煩雑なので軽い法律家は尻込みするようである。加えて、信託銀行では金融資産に詳しいようであるがその場で不動産の売却などの知識がなくて返答がなくて当職に持ち込まれることがあるようである。

いずれにしろ、少子化の中で田舎であろう都会であろうと不動産の処分が必要な相続は増えるばかりでこのタイプの遺言書は今後とも必要性が高いであろう。

清算型において、相続人は自分が不動産をもらわないのに登記名義になること、不動産譲渡税を支払う義務が発生する2点において難儀になろう。

遺言執行人はこの点を十分に理解して進めることが大切で、この2点を当然のごとく言わずに粛々と進めていくことが肝要であろう。

なお、先だってある大手の有名な司法書士事務所で、遺言執行人である当職の名義にして進めると言い出し、そこへ売却の大手不動産会社が乗っかってきそうになったときは驚いた。ここでも総合的な仕事の進め方と人間のバランス感覚ほど大事なものはないと持った次第である。税務等の無知は怖く専門のみの偏った判断では後から収拾のつかないことになろう。

この場合には、今後増えそうなのが、相続人が不存在の場合で、遺言執行者は裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てて、売却の手続をする。名義変更の点は法務局と相談し、売却後の不動産譲渡所得税のことは最寄りの税務署と相談することになろう。いずれの官庁も個別ケースは担当の裁量も少なからず入るので話しながら進める。

いずれにしろ、遺言執行人の真骨頂が問われる。

(2)清算型遺言書の例

第1条 遺言者は、遺言者の所有する別紙財産目録記載の不動産を含心一切の財産につき、後記遺言執行者において換金及び換価処分をし、当該換価金等から遺言者の介護費用、医療関係費用その他の債務の弁済、葬儀・納骨・法要関係の費用及びこの遺言の執行に関する費用等の支払いにあてた残余金について、下記の者に下記の割合で相続させまたは遺贈する。

(1)残余金の5分の4を亡き弟の長男○○○○(昭和○○年○月○○日生)と同長女○○○○(昭和○○年○月○○日生)に均等に相続させる。
(2)残りの残余金を遺言者が世話になった公益社団法人○○○○(住所:京都市○○区○○丁目○○番○○号、電話番号:○○-○○○-○○○○)に遺贈する。
2 前項の受遺者が遺言者より先に死亡したときは、死亡した者の相続人に当該財産を相続させまたは遺贈する。
第2条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
住所 京都府京都市中京区池之内町13-6
職素 弁護士
氏名 ○○○○
生年月日 昭和○○年○〇月○○日生
2 遺言執行者は、遺言者の貸金庫の開庫、貸金庫契約の解約、遺産の換価処分、各種登記手続、預貯金債権その他の金融資産の名義変更、払戻し、解約等のほか、医療費、公租公課その他の債務の支払い、生命保険の請求手続、年金関係の各種届出に開する事務処理のための経費等を支払うことなど、本遺言執行に必要なー切の行為をする権限を有する。
3 遺言執行者は、必要と認めるときは第三者にその事務を委任することができる。その費用も遺産を当てる。
4 遺言者は、遺言執行者の事務所が定める報酬規定による報酬を支払う。

(以下略)

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